revolutio という国際バズワード

「コペルニクス的転回」が「科学革命」の引き金を引いたかのような語り方があるけれど、Copernican revolution はドイツ語では Kopernikanische Wende で、革命 Revolution ではなく転換 Wende と呼ばれているようだし、カントの純粋理性批判には、「思考法の変換 Umänderung der Denkart」という言い回しがあるだけで、Wende の語すら出てこない。

ここまでは前に調べたが、

http://d.hatena.ne.jp/tsiraisi/20150103/p4

話の発端になったコペルニクスの書名「天体の回転について De revolutionibus orbium coelestium」の回転の語が revolutio なのは気付いていなかった。

天文学・自然科学で回転 revolutio が「発想の転換」を示すキーワード、スローガンになったのと緩やかに関連しながら、政治でも王様の首のすげ替え(中国なら「革命」の語で呼んだような)が revolution と大げさに言われるようになり、この大げさな語法が20世紀半ばの科学史へとブーメランのように還流して、17世紀の scientific revolution が言われるようになった。ただし、18世紀後半のカントは、そもそも revolutio という単語自体をそういう風なバズワードとして使用することすらやっていない。

という風に、印刷とジャーナリズムの近代を「revolutio」という言葉がぐるぐる回転しているに過ぎないようだ。東アジア儒教文化圏の「革命」概念を知っている者が、revolutio の語がぐるぐる回るのを見て、どれが「革命」でどれがそうでないのか、見極めようと必死になるのは、欧米に追随しないと生き残れなさそうな(しかも、我等は易姓革命など一度たりとも起きてはいない万世一系である、と言い張る国柄の島の)島民としては仕方のないところではあるけれど、疑似問題の可能性が高い。

revolution とはどういう種類の回転なのか、「元どおりに(re-)曲げる(-volve)」のかと私も思ってしまっていたが、天体の周期運動なんだったら、そういうことは考えないでよさそうだ。

小谷野敦が、revolution の語を政治的な事象に使うようになったのは、暴動 revolt という単語からの類推が働いたのではないか、と指摘しているが、revolt の場合は、「反対に(re-)回す(volve)」=反乱、なのだから、ますます「re- = 元どおり」というようなことは考慮しないでよさそうだ。

反米という病 なんとなく、リベラル

反米という病 なんとなく、リベラル

(ラ・ロシュフコー=リアンクール公爵が Non sire, ce n'est pas une révolte, c'est une révolution. と言った、という風に revolt と revolution の語を対比する逸話は、なにが出典でどういう経緯で今日に伝わっているのだろう。)